第1回「福祉と建築 -知る・つながる・やってみる-」イベントレポート
2018年11月3日、東京・御茶ノ水のデジタルハリウッド大学 駿河台ホールで、記念すべき第1回「福祉と建築 -知る・つながる・やってみる-」を開催しました。医療介護福祉と建築という、これまで交わることの少なかった二つの分野が出会う場として企画したところ、当日は100名を超える方にお集まりいただき、満員となりました。参加者は医療介護福祉の従事者が約6割、建築関係が約3割、そのほか都市開発・不動産・大学・メディアなどの方が約1割。まさに業種を越えて人が集まる一日となりました。
なぜ「福祉と建築」を始めたのか
きっかけは、代表・大谷が看護学生だった頃にさかのぼります。シルバーウッドが運営するサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」を見学したとき、従来の高齢者住宅とは違い「自分が住みたくなる場所」だと感じました。建築やインテリアのデザインを通じて、その人が自分らしく生きられるケアがある――。空間や環境が、そこで暮らす人やそこで働く職員をエンパワーメントする力を持つことを体感したのです。この原体験が、ケアの専門家と建築の専門家が出会う場をつくりたいという思いにつながりました。
基調講演「ケアの科学と創造的福祉実践 ―クリエイターとの共同で変わる福祉―」/ 飯田大輔(社会福祉法人 福祉楽団 理事長)
第1回の基調講演は、飯田大輔さん。ケアを「優しさ」や「思いやり」といった情緒的な言葉だけでなく、科学として、そして創造的な実践として捉え直す視点が示されました。クリエイター(建築家・デザイナー)との協働によって、福祉の現場がどう変わりうるのか。以降の福祉と建築で繰り返し語られることになる「ケアと建築」というテーマの出発点となる講演でした。
実事例セッション ― 事業者と建築家が語る3組
続いて、実際に協働している(あるいはこれから取り組もうとする)福祉事業者と建築家が、3つのテーマで語り合いました。
- 「従来型特養改修の可能性」/馬場拓也(社会福祉法人 愛川舜寿会) × 金野千恵(teco)
- 「住まいとしての福祉施設」/櫛田啓(みねやま福祉会) × 大垣優太(U設計室)
- 「施設と地域をつなげる」/飯田大輔(社会福祉法人 福祉楽団) × 山道拓人(ツバメアーキテクツ)
特別養護老人ホームの改修、住まいとしての施設のあり方、施設と地域をどうつなぐか――。のちの第2回・第3回、そして各地のプロジェクトへと発展していくテーマの多くが、この日すでに芽を出していました。
建築家ショートピッチと「医療介護と建築」
後半は、若手建築家6名によるショートピッチ。それぞれの取り組みを短い時間で紹介し、福祉の現場に新しい視点を持ち込みました。さらに「医療介護と建築」セッションでは、飯田大輔さんに加え、北城雅照さん(足立慶友整形外科・足立慶友リハビリテーション病院 理事長)、瀬田宏哉さん(ロコクリニック中目黒)、西智弘さん(川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター)、糟谷明範さん(Sync Happiness)が登壇し、医療・介護の現場と建築が交わる可能性を多角的に語りました。
展示と懇談 ― 模型を囲んで生まれた対話
会場では、参加建築家による建築模型や家具の展示も行いました。印象的だったのは、ある建築家の「福祉について学ぶことが、建築家としての学びになった。建築の原点は福祉にあり、雨風から身を守りプライバシーを確保するという住宅・建築の役割は、そもそもホスピタリティを必要としている」という言葉。イベント後の懇談会では、医療介護福祉の関係者と建築家が模型を囲み、真剣に、そして楽しそうに対話する光景が広がりました。
おわりに
第1回は、業種を越えた協働が実際に生まれる場となり、この日をきっかけに具体的な仕事へとつながったケースも生まれました。ケアの専門家と建築の専門家が、人の住まいや暮らしについて一緒に考える。その一歩がここから始まりました。福祉事業者と建築家との出会いが、明日の福祉実践を変えていく――その手応えを胸に、福祉と建築は第2回、第3回へと歩みを進めていきます。
本レポートは、代表・大谷による当日の記録(note)をもとに再構成しました。
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